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「不幸な国の幸福論」

不幸な国の幸福論 (集英社新書 522C)不幸な国の幸福論 (集英社新書 522C)
(2009/12/16)
加賀 乙彦

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未熟な本です。
システムの問題と、個人の問題を一緒にしています。
対策があいまいです。


全体の主題は、考えない国民から考える国民へのシフト、でした。
1・本当に不満を言うような状況なのか?
2・今の状況を変えるには、自分の何を変えればいいか?
この二つを整理して、各自判断することを勧めています。

要は、
現在は、そこにある事実で、変わらない。
他人が悪い、社会が悪いと言っても変わらない。
マスターベーション以外の意味はない。

本気で変えるなら、自分の生活行動を変えるしかない。
そういうことです。


しかし、その主題すらも破綻しています。

中盤で、
「考えない」例として、自民党の圧勝を挙げています。
これは、おかしい。
小選挙区制は圧勝する政党を作るための制度だから、ある政党が勝利するときは圧勝します。

「考えた」例として、民主党の圧勝を挙げています。
これも、おかしい。
「今の政治がおかしいと気づいた」、というのはおかしい。
自民党政権の欠点に気がついた、ことと、民主党がすばらしい、とは全く結びつかない。
単にマスコミが政権交代を煽りに煽った結果でしょう。
その意味で著者自身が「考えて」いません。


OECD各国の社会保障費率に比べ日本の社会保障率が低い、と仰っています。
その通り。
では過去からずっと予算配分を変えればよかったのでしょうか。
いいえ。
著者の世代が老後を飢えていないのはなぜでしょうか。
企業を社会保障の受け皿とするシステムが作られていたからです。
終身雇用はそのためにありました。
企業を優遇する=国民の福利厚生の担保でした。
将来への不安をもたらしたものは、今まで国が提供してきた人生モデルを破綻させたのに、それに代わる新しいモデルが提示されないからです。
予算配分を変えてもモデルが提示されない限り、生活保護世帯が増えるだけで解決にはなりません。


経済や企業活動を重視する予算配分をした具体例として、小泉政権、麻生政権の後期高齢者制度を挙げていました。
導入の論議で、今後、制度が破綻することが見えていたから、制度を敷いたという経緯がありました。
それを福祉軽視の一言で断罪すると、ものごとの一面に取り込まれず、視点を変えれば生き方が楽になるという著者の主張に説得力がなくなります。後期高齢者制度だけでも、ほんの数ページで結論がだせるようなものではありません。







さらに、
個人の問題として具体的にどうするのかについて、
人生の主人になる、しなやかに生きる、などを挙げています。
一つ一つの語句は、いいことを書いています。
しかし表層的です。
なぜなら、それぞれの語句に相関性が見当たらないからです。
「あなたは、そうかもしれない。では私は?」
それに対する回答がないのです。
秋葉原の犯人のように絶望に取り込まれた若者に伝える言葉のはずです。


前章を受けて最終章で生と死について
日々、気がついたことを章立てにして記録されています。
中身は前章同様、ぶつ切り。
これなら個人ブログで充分です。


そもそも、苦しんでいる人は視点を変え、気持ちを変え、
今を必死に生きて、それでも黒い妄想に取り付かれてしまうのであって、
ここで書かれているようなことはすでにやっています。


何をどうやっても150万の年収を超える方法が見つからず、
時間も金も余裕が一切無く、好きな人とのデートもままならず、
家庭を築き子どもを幸せに育てるなんてもっての外。
「○ちゃん、いつも同じ服ねー」「○ちゃん、お金ないから修学旅行いけないってー」
どうやっても子どもに苦労させる未来しか出てこない。
無責任なバカ親のように、勝手に生んで勝手に育てとブン投げたくない、
幸せに、せめて過不足なく部活などをさせながら大学まで行かせてやりたい、
その程度ですら、果てしない夢物語としか思えない人に、この本は、残酷です。
その日をしのぐ言葉はあっても、未来への展望や希望を語る言葉がないのです。


著者は社会学者ではなくて、医師で、臨床で、カウンセラーに近い立場なのに、
説得力を持たせようとするために、社会学的な方法を求めておかしくなってしまった。
今起きている問題はシステムの問題です。
それを著者は、
個人の問題に矮小化させています。
この問題に触れながら、新しいモデルを提示しない時点で、
本質からの逃走とか、敵前逃亡とか、責任放棄とか言われるべきものです。
最初から専門分野の心理学や犯罪学に特化して論じていれば、ここまで破綻した本にはならなかったでしょう。


「死刑囚の記録」で体ごと人間にぶつかっていった加賀乙彦という作家は
死んだのだな、
それを充分に教えてくれた一冊でした。
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Author:がっさん
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